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家族信託って何?

こんにちは!

ファイナンシャルプランナーの中込です。

地域により緊急事態宣言の解除が決定しました。しかし、依然として油断できない状況であることに変わりはありませんので、5月中はご自宅での学びの時間として頂ければと思います。

さて、今月のブログでは「家族信託って何?」と題して、最近注目が集まっている家族信託についての基本的な部分を解説していきたいと思います。制度の仕組みからよく比較される成年後見制度との違いなど、メリット・デメリットも含めてお伝えして参りますので最後までお付き合い頂ければ幸いです。

信託って何?

家族信託という言葉の中にある「信託」とはどういった意味があるのでしょうか?

信じて託すから信託というその名の通りなのですが、

「自分の財産を信頼できる誰かに託し、自分で決めた目的に沿って管理・運用してもらう仕組み」です。

信託と聞くと投資信託を思い浮かべる方もいらっしゃることでしょう。投資信託は、こちらも読んで字のごとく、自分の財産を信頼できる運用会社等に託し、その運用成績が投資した分の財産に反映されるということになります。

一方で、家族信託は自分の財産を信頼する家族に託し、管理してもらうという仕組みです。投資信託のように運用益を狙って行うものではありません。そのため、投資信託の契約で通常発生する信託報酬(手数料)は家族信託の場合発生しません。あくまで、家族が非営利で行う財産管理とお考え下さい。

家族信託の基本

では、なぜ家族に自分の財産を管理してもらうという仕組みが存在するのでしょうか。

皆さんもご存知のように日本は高齢化社会を迎えています。自身で財産に関する判断が出来る状態であれば財産管理を行えますが、認知症等に代表される判断が出来なくなってしまった場合、その方の財産はどうなってしまうでしょう。

最も分かりやすい財産である預金の場合、認知症等の発症で本人の判断能力が著しく低下してしまうと、凍結される場合があります。預金凍結と聞くと亡くなった場合のみだという認識が一般的ですが、上記のような場合でも凍結の対象となります。

著しく判断能力が低下した場合とは具体的に、本人が窓口に来られない・名前が書けない・生年月日が書けない等が該当するようです。具体的に何を持って凍結対象となるかは金融機関よって判断に差が出ることがありますので、詳しくは各金融機関までお問い合わせください。

預金以外によくあるケースとして、親が老人ホーム等の施設へ入所するお金を作るために、実家を売却しようとする。しかし、本人が認知症を発症しており判断能力が低くなってしまったため、家の売買契約を成立させることができないということがよくあります。

預金・不動産いずれの場合でも、それぞれ判断能力のある元気なうちに信託契約を締結しておけば、凍結や売却不可といった問題は回避することが可能です。また、振り込め詐欺等から高齢者を守るためにも有効な手段と言えるでしょう。

ただし、上記にもあるように判断能力のある元気なうちに信託契約を結ばなければならないため、すでに認知症等を発症し、判断能力が低下してしまった場合には次に解説する成年後見制度(法廷後見)に頼る必要が出てきます。

後見制度と家族信託

残念ながらすでに判断能力が低下している場合は成年後見制度(法廷後見)を利用することになります。予め備えておける家族信託と成年後見制度(法廷後見)には大きな違いとして以下のようなものが存在します。※今回はブログスペースの都合上、成年後見制度を法廷後見として記載しています。

・管理してもらう人は誰になるか

家族信託の場合はご自身で誰に管理してもらいたいかを決めることが可能ですが、成年後見制度の場合決定するのは家庭裁判所になります。そのため必ずしも家族の誰かが後見人になるという保証はありません。よくあるケースとしては司法書士さんや弁護士さんが後見人に指定されます。

・管理してもらう財産の範囲

家族信託の場合は管理してもらう財産の範囲を自由に設定することが可能です。

一方、成年後見制度は財産全体の管理を任せることになるので、特定の財産のみといった指定はできません。さらに、成年後見制度では本人の利益を第一に考えた財産管理となるため、相続税対策など一時的に財産を持つ方が不利になるスキーム(生前贈与や居住用不動産の売却など)は基本的に行うことが出来ません。財産管理の範囲に関しては家族信託の方が自由度の高い仕組みだと言えるでしょう。

・ランニングコスト

家族信託は信託契約の締結時、専門家に頼ることが多いため、一回限りですがサポートや契約書作成費として手数料が発生します。継続的なサポートをお願いしない限り、一定間隔で発生する費用はありません。

成年後見制度は一定以上の資産を持つ方の場合、後見監督人が就けられることが多いです。後見監督人は司法書士さんや弁護士さんといった方々が就任することになりますので、財産をお持ちの方が生きている限り月額数万円の費用を支払い続ける必要があります。また、後見人自体が家族ではなく、士業の先生と指定される場合も同様に一定間隔で費用が発生してしまいます。

二つの制度の大きな違いとしては上記3点になりますが、一見すると家族信託の方が自由度も高く、発生する費用も少なく抑えられるためベストな選択に見えますが、必ずしもそうとは限りません。

例えば、子どもたちが都会に居住。財産を持つ親は田舎に住んでいて、中々頻繁に会うことは難しいといった場合。頻繁に会うことが難しいわけですから、当然財産管理は出来ません。

または、家族間で財産争いが発生しそうな場合。このような状況では、家族に任せて財産管理をお願いしたとしても、家族間での紛争に発展する可能性が高いと考えます。

そして、一番大切な点は元気なうち(判断能力のあるうち)しか、家族信託は出来ないということです。どちらの制度にも一長一短が存在しますので、利用を検討される際は専門家へ相談されることを強くおススメします。

財産をどうしていきたいか?

今回の家族信託に限らず、相続関連の問題はまず何をおいても腹を割って話すことに尽きると考えます。確かにご自身の財産を子どもに話すのは気が引けるでしょう。親に財産を尋ねるのも気が引けるでしょう。故にお金の話は秘密なまま次世代へ引き継がれていくケースがこれまでは多かったように思います。

しかし、核家族は当たり前の現代です。昔と比べ親世代・子世代との物理的な距離・心理的な距離も広がっているのではないでしょうか。だからこそ、家族信託や成年後見制度といった新しいスキームが誕生しているのですが、いざという時に考えるのでは遅いのです。

ある程度元気なうちに、誰に何をどうやってほしいかといった意思表示をしておけば、もしご自身に判断能力が無くなってしまっても、思い描いたプラン通りに財産は管理されていき、時間が経過し亡くなってしまったとしても、遺言書を活用すればある程度渡したい人に財産は渡せます。

家族信託に限らず相続に係る相談は基本的に元気なうちに行うのが基本です。

時節柄、相続に関するご相談が多くなってきたように感じます。確かに、コロナウイルスへの恐怖から「自分に何かあったらどうしよう…」と不安に思うのはもっともなことです。どうぞ、ご相談の前に自身が長年かけて苦労して築いた財産を、誰にどのようにしてほしいかを考え、ご自身の希望をまとめておいてください。ご自身の希望がまとまったら、出来るだけその通りになるような手段を一緒に考えるお手伝いをさせて頂ければと思います。

本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

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