令和3年度税制改正大綱で暮らしはどうなる?
こんにちは!
コロナに始まり未だ感染拡大が続いている本年も残り半月となりました。来年こそ安心して人と会い、食事や旅行を楽しめる世界に戻ってほしいものです。
さて、今月のブログは『令和3年度税制改正大綱で暮らしはどうなる?』と題し、12月10日に与党が決定した令和3年度税制改正大綱をもとに、我々の生活に影響を及ぼしそうな部分を分かりやすく解説してまいります。
特にこれから住宅や自動車の購入を検討されている方には知っておいていただきたい項目もございますので、ぜひ最後までお付き合いください。
税制改正大綱とは?
例年、12月中旬になると翌年度の税制改正について報道されますが、税制改正大綱という方針を元に報道されています。
各省庁や関係団体などからの要望を元に、与党の税制調査会が中心となってまとめ、その後閣議を経て法案が作成され、国会で審議されます。審議の結果、新年度である4月から新しい税制がスタートするという流れです。
つまり、税制改正大綱の段階では翌年度の改正事項も確定ではありませんが、新年度の税制を決めて行く上でのたたき台のようなものですので、その内容には当然注目が集まります。
法人課税や資産課税の改正なども注目度は高いものですが、やはり我々の暮らしに直結する「個人所得課税」は特に注目度の高い内容です。いわゆる手取りに直結する所得税や住民税に関する項目も個人所得課税には盛り込まれますので、冒頭お話した「我々の生活に影響を及ぼしそうな部分」というのは個人所得課税の改正になります。今回の改正では特にコロナの影響で落ち込んだ経済を回復させるためという一貫した方針が示されていますが、一体来年度はどのように個人所得の税制は変わっていくのか? 主だったものを一つずつ解説していきます。
住宅購入関連
①住宅ローン控除の延長
「住宅ローン年末残高の1%が13年間控除される」という仕組みをご存知の方も多いと思います。以前は10年間の控除期間でしたが、先の消費増税により3年間延長され13年間受けられるように変更されました。
仮に4,000万円の残高が年末にあった場合、その1%である40万円が所得税から控除されます。所得税から控除しきれなかった分は住民税から最高で136,500円を限度に控除されるのですが、注文住宅の場合2020年の9月末までに契約を済ませ、2021年末までに入居しなければ上記控除を受けることは出来ませんでした。
今回の税制改正大綱ではこの期間が延長され注文住宅の場合2021年9月までに契約を済ませ、2022年末までに入居すれば良いという形に変更されました。
住宅ローン控除は数ある個人節税対策の中でも、家計に大きな影響を与えるものですので、今回の延長はこれから住宅を購入される方にとって歓迎すべき改正と言えるでしょう。
また、合計所得1000万円以下の方が床面積40㎡以上50㎡未満の住宅を購入した際にも住宅ローン控除が受けられるようになりました。以前は50㎡以上で合計所得3000万円以下という要件がありましたが、今回の緩和により、1LDKや1DKなど単身者用の間取りで持ち家を購入しようとしている方にも朗報ですね。
②住宅取得等資金の贈与
マイホームを建てる際に親から援助してもらうというのはよくある話です。通常、親に限らず人からお金やお金に変わる対価を貰った時には、もらった側に贈与税が発生します。110万円の控除が有名な贈与税ですが、直系尊属(両親・祖父母)からマイホーム購入の費用を援助された場合、一定金額まで贈与税は非課税となる仕組みが存在します。
上表が非課税枠の現行体制ですが、来年の4月より非課税枠が減少することが分かると思います。これが撤廃され、令和3年(2021年)12月31日まで、省エネ住宅等は1,500万円。その他の一般住宅は1,000万円という枠で継続することになりました。
さらに、先に述べた住宅ローン控除の延長同様、床面積の要件緩和も存在します。50㎡以上240㎡という要件が、贈与を受ける側の年間所得1000万円以下であれば40㎡以上240㎡となりますので、1LDK・1DKなどの不動産相場にも影響を及ぼす可能性があるかもしれませんね。
よくある相談として相続対策になるのか? というものがありますが、特別受益と取られることにもなりますので、必ずしも相続対策になるとは言えませんが、親世代の財産を子ども世代へ早めに渡したい。と考えている方には歓迎すべき改正と言えるでしょう。
自動車の購入
エコカー減税の延長も税制改正大綱には盛り込まれました。
自動車を購入する際や車検の際、自動車重量税という税金を払うことになるのですが、燃費基準に応じて減税されるという仕組みが存在します。
そんなエコカー減税の期限が2年間延長され、2021年4月までという期限が2023年4月までとなりました。今後、電気自動車を始めとする環境性能の高い自動車は続々登場することでしょうから、「そろそろうちも電気自動車にしようかな?」と考えているご家族にはピッタリな改正です。
ただし、減税とはいえ燃費基準により25%~100%と減税の幅は異なります。100%減税(免税)の自動車となると電気自動車やプラグインハイブリッドなど購入金額も高価なものが多く存在しますので、家計と十分に相談しながら購入計画を立てることを忘れないで頂ければと思います。
基礎控除・給与所得控除の見直し
そもそも所得で2500万円超という高所得者にとって基礎控除をどのくらい気にしている方がいらっしゃるかは疑問ですが、一般的な収入の方は基礎控除が上がります。ということは、税金を計算する元になる数字が少なくなるわけですから減税に繋がっていると言えるでしょう。
しかし、基礎控除が上がったのと同時に給与所得控除は一律10万円引き下げられることになりました。また、控除要件である給与所得の上限が1000万円から850万円となり、(※子育て世代は「所得金額調整控除」が設定され適用外)控除額上限も220万円から195万円へ変更されます。
基礎控除・給与所得控除の見直しで一般的な収入の方の場合、減税となるケースが多くなりますが、給与として年間850万円以上貰っている子育て世帯でない方は増税となってしまいます。
オーナー社長であれば自身の給与を比較的簡単に変更することは可能ですが、一般的な会社員の方で上記のような高い年収を得ている方の場合、iDeCoやふるさと納税の活用など、来年からは個人の節税対策もますます重要になってくることでしょう。
今回のまとめ
ご紹介した改正項目以外に、子育て世帯への国や自治体による助成金を非課税にするものであったり、役所へ届け出る一部書類への押印の廃止であったり、固定資産税評価額の据え置きなど、多様な項目にデジタル化への推進とコロナの影響から早く立ち直っていきたいという国の想いを感じる税制改正大綱でした。
個人世帯で言えば住宅ローン控除の延長は歓迎すべきものですが、現状変動金利を選択した場合、1%以下で融資を受けられる金融機関がほとんどです。しかし、控除は年末残高の1%ですので住宅ローン控除額が、住宅ローン利息支払い額を上回っているケースが多く、令和4年度の税制改正では支払った利息を考慮した控除へ変更される可能性も出てきました。詳しくは令和3年度税制改正大綱の11ページに記載がありますが、超低金利が続いていくようであれば十分考えられる改正ではありますので、今後も注意して見ていく必要がありそうです。
住宅ローン控除以外にも税制改正は個人の生活に大なり小なり影響を及ぼします。改正による減税や優遇策があれば積極的に利用し、増税があれば支払う税金を少なくする方法の検討も必要になりますが、増税に耐えうる資産形成も同時に行っていく必要があります。例えばふるさと納税とiDeCoを活用するであるとか、積立NISAで堅実に資産形成を行うといったことがそれらにあたります。
制度の基本や「自分にどんな方法が合っているのか?」といったことでお悩みの際は是非お気軽にご相談ください。
来年こそ、リアルセミナーやイベントなどで多くのお客様と対面で相談に対応できる世の中になってくれることを切に願っております。
良いお年をお迎えください。
本年も当ブログをお読みいただきありがとうございました。
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